「ひなた…ごめん!!私、帰る!!」
「は!?…ちょ、」
驚くひなたを置いて、私は生徒会室を飛び出そうとした。
でも、私の足が前に進むことはなかった。
「…して。……離して……っ」
鼓動が速まるのが、イヤでも分かる。
「アンタは、本物のバカだ」
「…離してってば……」
「また傷つきに行くのか」
「お願い…離して。遥翔のところに行かせて……」
涙目になりながら、私の腕をつかむ唯を見上げた。
唯の不安げな顔が目に映る。
私を心配してくれてるんだって
また傷つかないように
バカな私が傷つかないように
…止めてくれている。
けど
「ごめん、唯。私…相当バカみたい!」
ニコッと笑顔を向け、驚いてる唯。
私は腕を掴んでる唯の細い指を丁寧に外していった。
みんなよりは小さい唯の手をギュッとにぎり、私は涙をかみ殺す。
あんな黒い瞳をした遥翔を、私はただ見ているだけなんてできない。
だからお願い、唯……行かせて。
「遥翔をほっとけないの」
そう言った瞬間、私の頬に温かいなにかが流れた。
それでも私は、微笑む。
だって、哀しくないもの。
だって、辛くないもの。
……ただ、少しだけ悔しいだけ。
私はもう1度手を握ってから、カバンを持って唯に背を向けた。
もう唯は、なにも言わなかった。
唯の何とも言えない表情にズキンと胸が疼く。
この感覚は嫌い。
でも、そんなこと、今は気にしてなんていられなかった。
ただただ、後姿を探し求めていた。

