唇を噛み締めた、その途端冷たい雨が強くなった。






…最悪。


傘なんてもってるわけないし。


学校から借りてる服も汚れちゃうし。





「……ふっ、グズ……ッ」





なにもかも、ムチャクチャだ。




もう学校も楽しくない。

もう何もかも辛いだけ。




降りしきる冷たい雨が、肌を突き刺す。




寒いのに


それ以上に、心にポッカリ空いた穴のほうが大きくて。






雨なんて気にならなかった。




むしろ、降っているほうがよかった。



だって……流してくれるから。



私の頬をしきりに流れる涙を、流してくれる…から……。






「アンタ、本物のバカだな」




聞きなれた声と同時に、雨が止んだ。


違う……止んだんじゃない。





私は顔を上げた。



そこには、黒い傘を私の上で差し


どこか遠くを見つめる唯が立っていた。





唯が…自分が濡れるのもお構いなしで


雨から私を守ってくれた。






「…次はなに?まさか、笑いにきたの……?」

「俺はたまたま通りかかったこの公園で、たまたま泣いてるアンタを見つけた。ただそれだけ」






唯は涼しい声で、私には少しも目をくれず言った。




言い方はぶっきらぼうで


冷たいけど……なぜだろう…。








とても、優しく聞こえる。