哀河が膝をついて、弟の顔を見ている。姉貴もそれを見ていて、声をかけようと口を開いたまま。
「人を突き飛ばしたり、叩いたりするのはしちゃいけないの。約束、したよね?」
弟は何も答えない。
「お姉ちゃん、ほら、まだ幼いんだから。それに瞬くんが一方的に悪いんじゃないし」
「はい…本当にご迷惑かけてすみませんでした」
哀河は立ち上がって姉貴にも頭を下げる。でも、声を聞いて分かるくらい、そのトーンは低い。
帰ろう、と弟に言って、俺を見た。
「…ついてきてくれてありがとう」
弟と手を繋がないまま、教室を出て行く。



