不良の有岡について。



「哀河」


手を掴む。殺気立った表情をこちらに向ける。おお、怖い。


「なに?」

「深呼吸してみ」

「どうして?」

「今のお前見たら、弟絶対怖がるから」


それはあれだった。所謂タブー。

更に苛つかせてしまったらしく、手を払われてそのまま行ってしまった。

職員室の隣にあるいつもは無人の教室の前に、姉貴が立っていた。

赤いエプロンに苺のワッペン。この人にはよく裁縫を教えてもらった。


「お姉ちゃんだけ入って。ここで、少し待って」


はい、と哀河は頷きながら返事を。
俺は番犬よろしく姉貴の居た場所に立った。