頬を撫でられた。
「怒ってよ、廿楽には酷いこと言ったでしょう。私にも言ってよ、やっぱり本当のこと教えないだろって。」
「よく頑張ったな。これからは、全部一人で背負い込むなよ。」
脈絡のない言葉に涙が出そうになった。
ギュッと心臓が掴まれたみたいに痛い。
背中を抱き寄せられた。心臓よりも強く抱き締められる。
痛い、と思うけれど口には出さない。
軽い安請け合いで良い。
私はそれくらいの人間で。それくらいの言葉で安心する。
「今、すごく最低なこと考えたんだけど。言って良い?」
「うん。」
「今だけ、弟居ないから俺が一番だって思った。」
顔をあげる。
ごめんね、と声にしようと思った。でも、言葉にならなかった。
有岡は私と同じ高校生で、それなりの欲もあるのに何もせずに家に帰ってた。私はそれを当たり前だってどうして思っていたの。



