お風呂から出るときっちり寝間着が用意されていた。有難い、と思いながら袖を通すと袖が長くて複雑な気持ちになる。そりゃあ有岡は男子だけれど。
柔軟剤の良い香りがした。弟はちゃんとご飯を食べさせてもらっただろうか。ちゃんとお風呂に入って眠っただろうか。
リビングに行くと、深夜番組をぼーっと見る有岡の後ろ姿があった。
それから、少し思う。
私には弟が居た。休みの日も、一人だと抜いても良い昼ご飯を作らないといけないけれど、夕飯も一緒に食べる。
一人じゃなかった。
安藤先生と一緒に暮らしてこなかった有岡はずっと一人だったのかもしれない。
深沢さんだって夜は居ないみたいだし。
「お先に。」
「ん、俺も入ってくる。部屋行って、ドライヤーあるから。」
「ありがと。」
テレビの電源を消した有岡が立ち上がって、私に言った。それにくっついて、帰ってから有岡が最初に入った部屋の扉を開ける。
真っ暗な部屋の電気のスイッチを探す。
点けると、ベッドと勉強机と本棚。本棚には漫画が綺麗に並べられていた。



