きょとんとしている場合じゃないから、私帰れなくなっちゃったんだけど!
「いや、初めて見たから。叫ぶ哀河も、起きて叫ぶ人も。」
「笑ってる場合じゃないんだけど。」
「泊まってくんだと思ったから、起こさなかった。」
ドキリと心臓を打たれる。
なんでここで、そんな言葉を。
有岡の視線が私からテレビに逸れた。見ていた映画のエンドロールが流れている。
リモコンでそれを消して、手持無沙汰のようにそれを揺らす。
「で、どうしますか。」
「……泊まっていくにしても服が無いんですが。」
「寝間着くらいなら貸しますけど。」
「……お借りしたいです」
敬語で返すと、んじゃあ、と有岡が立ち上がる。
「風呂先に入ってて、着替え持ってく。」
「はーい。」
私は言葉に甘えて、玄関から来る途中にあったお風呂場に向かった。



