くん、と手を引かれたけれど、私は靴を履いたまま。


「早く、深沢さんは時間に厳しい。」

「私、悪いからいい。帰る。」

「あ? それだといつも俺が哀河に悪いことしてるってことになんだけど。」

「そういうことを言ってるんじゃ…。」

「じゃあ、甘んじて受け入れろ。」


なんでそんなに偉そうなの。

ちょっと笑うと、有岡の頬も緩む。
だから、私は笑うのが嫌いじゃないなあ、と最近思い始めた。

靴を脱いで、有岡宅に上がる。

床はつるつる。壁は真っ白。