でもだからって。


「へえ、有岡は私よりも怒田の方が教えてくれると思ったんだ。」


へえ、と再度言う。気まずそうに有岡が口を動かす。


「そういう眼すると思ったから嫌だった。海の時にしたような、そういう眼。」


海の時。そう言われて、思い出す。あの無理矢理海に引っ張り込まれた時。

私は更に鋭い目を向ける。


「けんか、してるの?」


ひょこりと出てきた頭は勿論弟のものだけど、普通に驚いた。


「いつからそこに…。」

「はやくなかなおりしてね。」


いやいや、喧嘩してる傍から早く仲直りしてって。

肩に有岡の腕がまわる。ぐいっと引き寄せられて、「喧嘩なんてしてねーだろ、な?」と声が降りてくる。
合わせるように笑顔を作った。


「してないしてない。」


手を振る。