その背中を見送ったあと、私は鳴りやまない家の電話をとった。 「もしもし。」 『おっそいんだけど。』 眉が自然に寄る。聞き慣れているわけじゃない。 嫌悪が耳から通って全身に回っていく。 弟の部屋に視線を送った。 「何の、用ですか?」 災いは、何度だって降り注ぐ。 誰に対しても、平等に。 『あの子に今度会せてほしいんだけど。』 猫だったら、全身の毛を逆立てているだろう。 私が人間で本当に良かった。