「色々ありがとう。」 靴を履く有岡の背中に声をかける。 弟は嬉しがってお風呂に入った後、すぐに眠ってしまった。 振り向く有岡は肩を竦めて笑う。 「こんな事しか役に立ちませんで。」 「皮肉に聞こえる。」 「充分な謙遜だろ?」 私にとっては、皮肉だ。 有岡は私に出来ないことを弟にしてくれるんだから。 家の電話が鳴った。 「出てこいよ。外まで来なくて良いから。」 「うん、じゃあまた。」 玄関から有岡は出て行く。