私は小さく頭を振る。 「離して。今、有岡の言葉、聞く余裕無いから。」 そして、その胸を押す。私は顔を見ずに校舎への扉を開いた。 有岡は追いかけて来ないだろう。 きっと、あの場に居た由比さんを放って私を追いかけたりしない。 「うぁ、っ。」 「わっ、」 寄りかかっていた扉が後ろに引かれた。一緒に体も後ろに倒れる。 背中が何かにぶつかった。 「な、んで。」 「逃げる女は追えってのが家訓なもんで。」 はあ?と眉を顰める。 有岡から体を離した。