早く帰らなきゃ。弟も、有岡も心配してるかもしれない。 でも、足が動かない。体が動かない。脳みそも、体に信号を送るのを忘れているのかもしれない。 顔を少しずらして、ベンチの手摺りを見る。 私を産んだ母は、本当に私が小学生の頃に亡くなった。 中三の春に、私と父親しか居なかった家に、あの人と弟が急に入ってきた。再婚したらしい父親は事後報告を経て、単身赴任をしてしまった。 雑すぎじゃない? 血の繋がってない家族の中に私一人が生活するの? これからどうすれば良いの? と、最初は頭を過ぎった。