この人の言う子供は、私じゃない。
弟のことだ。
「議論の余地は、無いです。」
私はこの人が嫌いだ。
嫌悪を超す殺意が起きるほど。
返事は何も無かった。
黙ったままだったので、私はそのまますれ違う。
「じゃあ、議論の余地がある奴に話すから。」
背中にかけられた言葉に、私は振り返らなかった。
夜の公園は静か。
切れかけた電灯がぼんやりと点いていた。猫一匹どころか、虫一匹居ないんじゃないかと思わせる。
ベンチの上で膝を抱く。この格好をしてから約十五分。
ぐるぐると、私の思考回路は同じ場所をまわっていた。



