逸らされた殺意はどこに向ければ良いの? 誰も教えてくれる人は居ないだろう。 逆に、貶されるかもしれない。 なんたって、この人は、 「あたしの子供、いい加減に返してくれない?」 あたしと弟の母親なのだから。 「何を、今更。」 「母親がうっさいんだよねえ、ああ、あんたの父親の母親。」 「どういう意味ですか。」 「ちゃんと幼稚園に通ってんのかとか、声聞かせろだとか。」 街灯に当たった部分の髪が、有岡よりも暗めの茶髪に見えた。 私は目を細める。