しかし結局、布団を持って部屋に帰ってきても少年はそこにいた。
どすんっと重たい音をさせて部屋の隅に布団を積む。
そこにダイビングしてごろごろしながら彼を見守った。

太陽の匂いが心地いい。
状況が状況なのに、私は呑気にそのまま眠りこけた。



***


『…き、…――き!なぁ、起きろよ--き!!』

(うるさいなぁもう…まだ眠いの)


遠くのほうから可愛らしい声が聴こえた。
霧がかかっているかのようにハッキリとは聴こえない。
心のどこかでこれは夢だとぼんやり感じていた。


『起きないとお前の髪の毛全部をむしり取るからな』

『――なっ!?』


夢の中の私が跳ね起きる。
覗き込むようにして少年が私を見つめていた。
逆光で顔が見えない。
けれど笑っているような気がした。


とても楽しそうに、鈴の音が響く。




――チリンッ



「――き!」


誰かがまた私を呼ぶ。