彼女、西内りか がこの施設にやってきたのは2歳の時。
今は高校二年生、あと一年とちょっとでこの施設ともお別れになる。

昔は、期待をしていた。

もしかしたら、お母さんが帰ってくるかもしれないとか
誰か私を養子にしてくれるかもしれないとか・・・。

最近は期待をしなくなった。

きっと、もうお母さんは帰ってこない・・・。

はぁー、とため息をついて頬杖をついていると、後ろに人の気配がした。
振り返ると、そこには施設に住む柏木英斗(かしわぎ-えいと)がいた。

「栄斗、どうした?」
「別に、コーラ取りに来ただけ」

そういいながら英斗は台所へ向かう。
対して変わらない日常。

英斗も、この施設に2歳ごろにやってきた。
りかと同級生、同じ高校に通う。

英斗もまた、深い傷を負っている。

「そーだ、夏美知らない?さっきからいないんだけど・・・」
「さあ、コンビニとかじゃね」
「大樹に続いて夏美までバイト始めたのかな・・・」
「りかもすればいいーじゃん」

軽々しく言う。
一応校則で禁止されているのだ。

「そういう問題じゃないの」

夏美、大樹。
彼女らもこの施設に住む高校二年生だ。
りか、英斗と同じ高校に通う。

「あーあ、なんかやだなぁ・・・。
みんな彼氏とか彼女作っちゃったりして。
私トロイからバイトとか向いてないし
ていうか面倒くさいし。
夏美がいないと暇なのに・・・」

この施設は、0歳~18歳までの子どもが預けられている。
それぞれ、0歳~3歳、4歳~5歳、6歳~12歳、
12歳~15歳、15歳~18歳というふうに分けられているのだ。

15~18という高校生クラスには、りか、英斗、夏美、大樹の四人しかいないのだった。