こつん、こつん…。
突然、後から響いてきた靴音。
そりゃ…
いつかは出て来るとは思ってたけどさ…。
こつん、こつん…。
もう少し、なんだよ。
せめてこの2人を逃がしてくれよ。
朱貴は身体張って、お前の妹を助けたんだ。
お前が妹を窮地に立たせても、
それを身体で救った朱貴の姿…判らないはずねえだろう?
感動したろう?
なあ…お前が人間であるのなら。
「周涅…」
赤銅色に彩られた端正な顔。
その名を呼んだのは、朱貴だった。
俺と桜は振り返る。
ある種…避けられねえ事態に、今更知らないフリは出来ねえ。
朱貴は横になったまま、片腕で気を失ったままの七瀬を抱いていた。
愛おしむようなその姿に――
「無様だな…朱貴…。
地を這う蛆虫のようだ。
穢らわしい…」
無慈悲な声が飛んだ。

