七瀬と朱貴を、両肩に担いで魔方陣から遠ざかる。
俺の動きが早送りになったのか、周囲の動きが低速度になったのかは判らねえけれど、主観と客観における時間の差違のおかげで、かろうじて2人を手に出来た俺は、こっちは大丈夫だと桜に手を振った。
それが視界の端っこに映ったんだろう。
桜は口元を引き上げて笑うと…
ドッガアアアアン!!!
真上から両手を伸して――
容赦なく、外気功を放つ。
チビの癖に、凄え力は相変わらずだけれど。
優等生の桜が、何で外気功以外の力を使えないのか不思議で仕方がねえよ。
落ちこぼれの俺でさえ、炎を発現出来るようになってるのに。
ドッガアアアアン!!!
桜も"魔方陣"には嫌気が差しているらしい。
俺が思うには、桜はストレスが溜まれば溜まる程、外気功の威力が増すタイプだ。
今は不機嫌度MAXらしい。
幻覚のせいもあるか。
…欲求不満?
「煌、ぼさっとするな、
――燃やせッッ!!!」
俺がそう思っているのを知ってか知らずか、突如桜の怒りの矛先を向けられて、俺は慌てて担いだままの2人を地面に下ろすと、その場で意識を集中して…めらめら燃える炎を想起した。
ワンワンワンワンッッッッ!!!
ワンワンワンワンッッッッ!!!
凄いな、あの小々猿犬。
桜の力に吹っ飛ばされる処か、驚いて逃げ出そうともしてねえ。
逆に女が逃げ出さないよう…囲いを強固にしてやがる。
ワンワンワンワンッッッッ!!!
ワンワンワンワンッッッッ!!!
勇敢さを褒めてやりてえけど、小々猿犬は全て、あの女を取り巻いて吼えまくるだけ。
何をするでもなく、ただ吼えるだけ。
小々猿犬は一体何モノよ!!?
吼えること自体に力が作用してるのか!!?

