シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



魔方陣は…あと少し!!!

七瀬、朱貴まであと少し!!!


体術でねじ伏せど、直ぐに力を取り戻す奴ら。

凄い再生力に、思わず目を瞠る。


「お…おぅ……ぇ…ぉおおお…」


耳に届く女の声が、益々人間離れしていく。


呪文のような響きが聞こえてきた時、女自体が…瘴気の塊となったように感じた。

やばい。


朱貴の精が吸い取られるのか。

完全に力が移行する前に、魔方陣を破壊しねえと!!!


そして魔方陣を破壊出来るのは、いつもの如く――


「桜!!! 行けッッッ!!!!」


纏わり付く複数の人間ごと飛び上がった桜が、真上から外気功を放つ。


「やべっ、七瀬!!!」


寸前で七瀬を隔離しようとした時、俺の行く手を不可解な衝撃波に遮られた。


ああ、女の纏う瘴気が邪魔としているのだろうか。


これか、聖が心配していたのは。


やばい、このままだと七瀬が犠牲に…!!!


「七瀬、七瀬!!!」


俺の声は聞こえないようだ。


横たわったまま、ぴくりとも動かない。


代わりに動いたのは…



「紫茉!!!!?」



震えたような朱貴の声がした。


「やめ……ろっ…」


初めて朱貴の抵抗らしい抵抗の声を聞いた気がする。

その声は弱々しく。


「い……ぐ…れ…」


女の…声にならない声に呼応するように、俺を阻む衝撃波は強まっていく。


駄目だ。


此処を抜け切れねえ。



「桜、桜、ストップだ!!!」



七瀬諸共、朱貴も犠牲になるかも知れねえ!!!




「え…!!? は!!!?」



桜も気づいたらしい。


しかし勢いは止らねえ。



「煌、2人を助けろッッッ!!!」



出来ねえから叫んだんだろうがッッ!!!



桜の両手から放たれる外気功。

しかもいつも以上に特大級。


やばい、やばいって!!!!



「――煌ッッッ!!!」



七瀬!!!


朱貴!!!







その時だった。



ワンワンワンワンッッッッ!!!

ワンワンワンワンッッッッ!!!

ワンワンワンワンッッッッ!!!



けたたましく吼える――

複数の犬が乱入してきたのは。