シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「見ろ、あの虚ろな表情は…トランス状態に入っている」


白目を剥いて俺達が居る後方に仰け反り、左右にゆらゆら揺れる女の上半身。


それは聞こえてくる合唱の旋律に合致していて。

動き続けているのは、女の意思か。


音が繰り出す、淫靡な光景。

これは狂った宴、魔宴(サバト)。


女が朱貴の精を吸い取って全ての瘴気を手に入れる時、その最高潮の盛り上がりに…一体何が起きるのだろうか。


濃度を高めた瘴気が強くなった中で。

新たな瘴気が、別の瘴気を生む中で。

欲だけが荒ぶるこの中で。


あの黄色い布はどんな意味を持つのか。


燃やしたい。

さっさと燃やした方がいい。


しかし――

聖はまだ"待て"。


そして前方奥の扉。


居る。


周涅が。


俺でさえ周涅の気配が判るなら。

きっと周涅だって俺と桜の気配は判っているだろう。


聖無視してさっさと突っ込むか!!?


攪乱して、混乱に乗じて逃げ切るか!!?



その時、聖の声がした。



「行けッッッ!!!」


俺と桜は目配せをして、

そして魔方陣目がけて飛び出した。