シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
「さ、盛るわけねえだろ!!?」


何で心底否定の言葉が嘘臭く響くのか。


その時、桜の触れた地面に…血が溜まっているのを見つけて。


「どうした、手を怪我したのか!!?」


桜の握りしめた手から血が滴り落ちていることに気づく。


「ただの気付けだ。何ともない」


広げた桜の手には…何かの破片。


硝子のようなもので、先端が尖っているものだった。


「いいものを拾えた。

よってたかって触手が伸びて、私を弄ぼうとした幻覚を払えた。


私は朱貴にはなれない。

痴態を晒すくらいなら…私は迷わず死を選ぶ」


そう言い切る桜は、いつもの桜で。

幻覚だと…自覚出来ていたのか。



「でも…今は出来ない。

全てを放りだして、逝くことは」



俺は…聞いてみた。



「芹霞は…出てこなかったのか?」



すると桜は僅から目を細めて、

そして俺から顔を背けた。



「芹霞さんが…

私など相手にするわけなかろう」



小さな小さな声だった。



「あるのだとすれば――

それは夢幻の世界」


痛いな。

桜の心が痛い。


だから幻覚だと見破れたのか。


愛されていないから――

愛されるのは夢のことだと。


「お前だって…芹霞に愛されてるよ」


俺はそう言うしか無くて。


「お前に言われたくない」


言い捨てるようにそう言うと、桜は無造作に地面に置かれたままの、青い上着を着た。