シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
降り立った地。


色めき立つ瘴気、という表現が相応しいだろう。


邪な空気を色欲が彩り、甘ったるい匂いが思考を曇らせる。


あのアホハットがGOサインを出したからは、恐らく…桜が降りた時より、濃厚な空気は薄らいでいるのだろう。


俺でも強行できるような。


別に俺…誰でも盛ってるわけじゃねえのに…。


地下室言えど、大した舗装もされていねえ…洞穴のような場所。


防音処理がされてねえ剥き出しの地肌からは、冷気が漂うはずなのに…此の場は異様な熱気しか渦巻いていねえ。


降りたってよく眺めれば、周り一面…妖しげな彫像品だらけ。


以前、"約束の地(カナン)"で見た黒山羊の像もあれば、蛇女もいる。


五芒星だの六芒星だの、色々な形の星の壁飾り(タペストリー)も飾られていて。


さらに並べられた、鏡やら剣やら杯やら…挙げ句には髑髏など胡散臭いもので充実したラインナップ。


腐りかけた小振りの大根みたいのまである。

先が足のように2つに割れていて…妙に艶めかしい。


何だよ、料理教室かよ。


ああ、こんなの見てるとキリがねえや。


集団は俺に気づく処か身動ぐ気配すらなく…多分、朱貴と女を見ているのだろう。


集団視姦。


吼えるような女の声が大きくなっている。


朱貴を後回しにしていいのか不安になって聖を見上げると、手で早く桜を助けろと指示される。


取り急ぎ桜だ!!!


大きな彫像の裏側に、蹲るようにしている桜を見つけ、半裸の上半身を抱き起こす。


「桜、大丈夫か!!?」


紅潮した頬。

ぴくぴく動く…伏せられた瞼を彩る長い睫。

乱れた…苦しげな呼吸が何とも悩ましく。


汗ばむ身体は男のものだというのに…


ごくん。


思わず唾を飲み込んでしまった俺。

そしてはっとする。


俺は、断じてそんな趣味はねえんだってば!!!

桜を食いてえなんて思ってねえんだってば!!!


「くっそ…起きろ、おいコラ、桜!!!」


半分自棄になったように、乱暴に華奢な身体を揺すぶれば、桜の大きな目が静かに開いて。


「私に盛れば…殺すぞ?」


どきっ。


何疚(やま)しい気分になってんだよ、俺!!!