「え? た、多分…やったことないけど…」
お前…最初から小々猿の姿作ってたのかよ…。
そっちの方が難しくねえか?
「"多分"の状態だと、この作戦は無理や。
あの女に心の底から揺さぶりを掛けるためには、"その姿"しかあらへんのや」
一体…どんな姿なんだ?
化け物の姿とか?
「翠はん!!!
この作戦は、翠はんの腕にかかっとる!!!
ウチは、翠はんなら絶対出来ると信じてま。
翠はんは強い。とても強いもんな~」
「――…。
………。
……いや…
それ程……までも…」
小猿、鼻の下がにょろ~んと伸びてる、鼻の下!!!
何て緊張感のねえ猿だ。
「それに…もし成功したら、葉山はんもきっと…裸忘れて喜んで飛びついてくるやろな。ちゅうの1つでもしてくれるとちゃいまっか? お、もしかして翠はんの初ちゅうは、葉山はん…」
すると小猿が突如、さっと右手を挙げ。
「俺、やります。
絶対やりますッッ!!!
是非やらせて下さいッッッ!!!」
聖はしたり顔となり…
そして被っていたシルクハットを小猿の頭に上から思い切り被せて。
「うわ、見えね…というかクサッッッ!!!
何だこれ、クサッッッ!!!」
「めっちゃ…傷つきますねん…」
目立つ色の金髪が、シルクハット型になっている。
「ワンワンはん…。
下に行っても、ウチの指示で動いて下はれ。
この穴は…ワンワンはんの炎で静かに溶かしてしまいまひょ。
マグマのイメージですわ。
今なら…魔方陣の瘴気がいい具合にぐらぐら揺らいで、あの女が吸い込もうとしておるから…大丈夫のはずや。
よし、では――
カウント10から入りまっせ?」
下を確認する猶予も与えず、聖は数を数え始めた。
そして――
「3,2,1…!!!!」
行けッッッ!!!!
先程までとは違い、
ゴオオオオ、とでも音が響きそうな見事な炎が揺らめいた。
出来た!!!
灼熱の温度で赤く染まった…穴の縁。
見る見る間に――
蕩けるようにして拡がっていく。
「ワンコ、すげえ~ッッ!!!
符呪なくても出来るなんてすげえ~ッッ!!!」
俺は得意げに笑って見せて、
「翠はん、余所見せんと!!!
式や、式!!!
詠唱に入りなはれ!!!」
そんな声を聞きながら、
大きくなった穴から飛び降りた。

