そして下を見ればあの女が、布を手にして朱貴に近付き――
「策があるとすれば、和合の後」
「あ?」
「あの狂宴においては、より強い精が瘴気という魔力を高め、得られた和合液にも大きな力が伴いま。よって今まで、宴の"依代"たる"生け贄"は、今まで精を放っていない処女や童貞が選ばれていたんや。だが朱やんは特別仕様にて、あの肉体と交われば交わるだけ己の力を高めるよって、その道を極めようとする者にはモテモテや。ま、あんな美形なら、力が仮になくとも普通にモテモテやろうけど」
あの女は、朱貴の上に群がる人間達を退け…
「朱やんは特殊仕様な身体の造りをしている上"仙道"にも通じてま。気を体内のチャクラに巡らす仙術ちゅうもんの熟練者は、男女ともに精が外に漏れにくくなることで力を温存するさかいに、余計…あんな数多く相手しても、朱やんは平然としてられるのや。
朱やんに限っては、特殊な体に蓄積されている精は何よりも大きい力を持つ。朱やんの精を得るということは、交合以上の力を得るに等しい」
悠然と朱貴に近付く。
「今回、これまた特殊仕様の紫茉はんを通して、流れ出る力を朱やんが受けた時点で、その精はいつも以上に力を持つんや。朱やんが精を放つだけで、この宴は今まで以上に意味を持つ。
あの女は魔術を操る魔女や。他の奴では耐えれた朱やんとて、どうなるかは判らへん。それを逆手にとるんや」
ゆっくりゆっくり…
聖に"魔女"と呼ばれたあの女は朱貴に近付いていく。
ああ、何だ?
あの女に…妙な違和感を感じるのは。
「朱やんの精を得ようとして、女はトランス状態に陥るはずや。吸魔力が最高潮になる瞬間。一時的に場の瘴気は彼女に流れ込む。その隙に魔方陣の陣形を崩して瘴気の結界を解き、布を火で燃やしなされ。火こそは五大元素の中で一番の聖なるものさかい、魔に効果的なんや」
俺は頷いた。
「しかしトランス状態いえど、彼女の普段纏う魔力は相当なもんや。それを抑えて魔方陣を崩すためには…」
アホハットが俺を見た。
「翠はんの力が…有効やろな…多分」
「小猿の?」
未だ俺の身体の中で暴れ続ける小猿。
「翠はんの力もまた特殊やさかい…ただ未熟なのが難点なんやけど…」
「あっちもこっちも"特殊"ばかり。どう特殊…「ワンワンはんも、"特殊"や」
わざと意味ありげな匂い漂わせて、核心はぼかすつもりか。
だけどいちいち聞いている暇もねえんだろう。

