シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
そんな時、視界にやけに目立つ色が入り込んでくる。


黄色。


「なあ…あの女、何だか意味ありげな大箱から黄色い何を取出したんだ?」


それは布のようなもので。

俺は――


黄色い外套男の纏っていた布…即ち、記憶ねえ俺が着ていた黄色い布を思い出した。


「あれは…イエスキリストの遺体を包んでいたとされる聖骸布」


「は!!?」


そんなにご大層なものなのか、あれ!!?


けったいな説明が偶然聞こえたのか、また小猿が見たいと騒ぎ出した。

目と耳と口塞ぎを二の腕でやってのけ、足で小猿の身体を挟むようにして制する俺。


アホハットは妙に感心した顔を向けながら、話を続ける。


「……の意味同様、黒魔術の中では最も魔力が高いとされている魔布」


ご大層なものの模造品(レプリカ)とは言えど、


「黒魔術!!!?」


俺だって知っている。

だけど"エコエコアザラク…"聞こえていたか?


「ワンワンはん…"エコエコアザラク…"だけが黒魔術ちゃいますねん。此の場は魔宴(サバト)を模した陰陽道且つ仙道且つ…まあ、いいとこ取り…でもなく悪いとこ取りの宴なんですわ」


それは意味ありげに。


「あの布は、それ自体に術をかけて瘴気を放たせている上、更に…和合液を染みこませ、魔力を倍増させる、アイテムなんや」


「ワゴウエキ?」


「そや。男と女の精液と愛液…性交の果てに生じる"汁"が混合したものや」


"液"ではなく、"汁"という言葉を用いられたおかげで、より卑猥で生々しく感じた俺は、思い切り顔を嫌悪で歪めさせた。