気味悪い声音響かせる、あの女の詠唱。

響き渡る…獣じみた男女の咆吼。


漂う瘴気の発現元は、一体どこからなのか。


…魔境と化した悦楽の領域。


そして――。


桜の変調。

狂ったように踊り続ける七瀬。

集団の欲を受け止める朱貴。


取り残された3人が、まだ"人"でいられる内に助けださねえとやばい。

非常にやばい。


頭の中、警鐘がけたたましく鳴り響いてやがる。


俺はどうすればいい?


小さすぎるこの穴、砕き広げて下に降りれるか?


遠隔的な力が作用しないというのなら、


「俺が行く…」


しかねえだろう。


「ワンワンはん…。葉山はんでも理性をぐらつきはっているのに、ワンワンはんなら大丈夫という訳あらへんわ。これは"経験者""未経験者"など無関係やさかい、ワンワンはんのような…あってないに等しい、ち~っぽけな理性の持ち"犬"なら、きっと尾っぽぶんぶん振りまくって、敵味方見境無く…朱やんや葉山はんに喜んで盛ってしもうやんか」



俺が…朱貴や桜を…?


少しばかり想像しかけた俺は、背筋に悪寒が走った。


「断じて!!! そんな趣味ねえぞ、俺は!!!」


「顕在意識なんて無効化されるのですわ、あの場は。理性が無くなった後に残るものを膨張させる空間やさかい…」


見れば見る程、桜は…苦しそうで。


「それでも、葉山はんの理性は大したものや。葉山はん…必死に戦ってますわ。完全に心を持っていかれてへん。鉄壁の心の持ち主や」


鉄壁でも完璧ではねえ。

あいつが幻の芹霞に流され、欲に弾けてしまえば…桜の精神が危険になる。


それも…時間の問題。