「手に噛み付くなって…せり、せり!!! どうして君はそんなに凶暴なんだよ、大人しくしてろって!!!」


妙な切迫感。


闇が怖い。

怖くて堪らない。


――…ちゃああん!!!


何、ねえ何なの!!?


闇の中から子供の声。


――…ちゃああん!!!


怖い。

怖い。

怖い。



「せり、おい…せり!!!」


無理矢理退けた久遠の手。


「判った、判った下ろすから!!!」


暴れるあたしを久遠は地に下ろす。


現実世界の風景が、突如目に映って安心した。

それでもまだ恐怖の名残に、足がかくかくいうけれど。


「……?」


奇異な眼差し向ける久遠の横、

あたしの視界に飛び込んできた"それ"。


何だろう、惹き付けられる。


「???」


それは、横倒しになっているヘリのプロペラの処。


ひっかかっている黒いものは何だろう。


「……せり!!?」



何だか舌打ちのような音が聞こえたけれど。


そんなことより…

もしやあれが…犯人の証拠品か!!!?



証拠品発見!!!

犯人許すまじ!!!


「せり、せり待て!!!」


珍しく焦った久遠の声が聞こえるけれど、それを無視して。


ずんずんと、あたしは憤りながら、凶器を確かめに歩く。


怒りが恐怖に弱った心に打ち勝ち、かくかくだった足は見事な復活を遂げたんだ。


その時だった。



「――せり、

上を見ろッッッ!!!」



突如久遠が叫んだから。

思わずあたしは上…空をみた。


そこにあったのは――…。