――何で、せりが…。まあ…緋狭の妹なら、不可能ではないだろうが…。
久遠は何やらぶつぶつ言っていたけれど、あたしは嬉しくて仕方が無い。
視るのはただの補助的なもの。
邪を弾くという者はもっと能動的なもの。
だとしたら――
あたしだって守られてばかりではなく…皆を守っていけるのではないかと。
あたしは"約束の地(カナン)"の危機に、役立てるか!!?
無力なあたしから脱皮できるか!!?
――せり。光を出せても、せりには制御が出来ない。ズブのド素人が、熟練者気取りをするな。
冷たい紅紫色の瞳。
――せりに出来ることは、せいぜい自分の身体についた蛆を払うことくらいだ。他人を救済できるなど、大それた夢は捨てろ。
カチンとくる言葉だけれど…
その通りかもしれない。
だけど…。
だけどさ…?
折角、あたしだけが出来るというものがあるのなら、精一杯頑張ってみたいと思うのが…普通じゃない?
ぷうとむくれていると、久遠の大げさな溜息が聞こえた。
――蓮、鏡を寄越せ。
久遠は蓮から鏡を受け取ると、あたしに渡して。
――そんなに"助けたい"のなら、オレを守れ。オレの足手纏いにならないように、精一杯頑張ればいい。
そして久遠は――
――オレを守ることだけ、考えていろ。
あたしを肩に担いだんだ。

