知りません。
判りません。
逆にあたしが聞きたいです。
あたしはただの平凡な女子高生。
特殊な力なんてあるわけない。
何で鏡が…。
そう覗き込んだあたしの目に映ったのは、鏡の縁に刻まれている模様。
…似ているんだ。
――北斗七星?
小猿くんの、鏡に。
あの鏡に刻まれていたような、小さな柄杓型の模様がある。
小猿くんの鏡は、星見の鏡とか言っていたっけ。
すると久遠が言った。
――北斗七星? これは…似て非なる南斗六星だ。
同じような柄杓型だれど、よくよく見れば…確かに点は6つしかない。
南斗六星なんて初めて聞いた。
――道教において、北斗七星は北斗星君と呼ばれる死をつかさどる神だが、南斗六星は、南斗星君と呼ばれる生をつかさどる神とみなしている。
偶然なんだろうか。
小猿くんが持っていた鏡と、非常に似通っているのは。
――ニトリクスの鏡には、対になるものがあると聞いたことがある。
久遠はそう言った。
――この鏡のように邪を弾く力はないけれど…"視る"ことに長けた鏡の筈だったが…。
多分…それだ。
――しかし…何で陰陽道の名家である皇城家に?
久遠は…あまり皇城家のことは知らないらしい。
皇城家が情報を開示しない特殊な家柄だからとか。
真実を映し出す、小猿くんの鏡。
意外な処で繋がるものだ。
視る者が限定される小猿くんの鏡。
邪を弾く者が限定される蓮の鏡。
そのどちらもあたしは、扱えるらしい。

