「久遠…?」
何が言いたいんだろう?
そう訝った時、久遠がはっとしたように顔を背ける。
珍しく、慌てた様子で。
どうしたのかな。
「久遠??」
顔を覗き込もうとしたあたし。
しかし久遠はそれを横目で見ると、避けるように背を向ける。
ふさふさ…。
目の前で久遠の毛が揺れる。
「何よ、久遠」
回り込んでその顔を見ようとすれば、やはり久遠は背を向ける。
ふさふさ…。
「ねえ、ちょっと!!!」
くるくる、くるくる。
エンドレスにあたし達はその場で回転する。
喧嘩売ってるのか!!!?
「だから何なのよ、久遠!!!」
「煩いな!!! せりは致命的な馬鹿なんだから、馬鹿は馬鹿らしくいつも通り鈍感で、何も気づかずへらへら笑ってろよ!!!」
「何ですって!!? それじゃあたしはただの馬鹿じゃない!!!」
「だから馬鹿だって言ってるだろ、せりは!!!」
「女の子に向かって、馬鹿馬鹿言わないでよ!!! どうして久遠はそんなに可愛くない言い方しか出来ないのよ!!」
「ああ、可愛くなくて結構!!! 今更"女の子"ぶるなよ、せり!!! それに、せりに可愛いなんて思われたら、ぞっとして鳥肌になるじゃないか!!!」
「~~ッッッ!!! 久遠、あんたね」
「煩いッッ!!!」
突如別の声に怒鳴られて。
見れば――
廊下で仁王立ちをする蓮だった。

