シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「久遠…?」


何が言いたいんだろう?

そう訝った時、久遠がはっとしたように顔を背ける。


珍しく、慌てた様子で。


どうしたのかな。


「久遠??」


顔を覗き込もうとしたあたし。

しかし久遠はそれを横目で見ると、避けるように背を向ける。


ふさふさ…。


目の前で久遠の毛が揺れる。


「何よ、久遠」


回り込んでその顔を見ようとすれば、やはり久遠は背を向ける。


ふさふさ…。


「ねえ、ちょっと!!!」


くるくる、くるくる。


エンドレスにあたし達はその場で回転する。


喧嘩売ってるのか!!!?


「だから何なのよ、久遠!!!」


「煩いな!!! せりは致命的な馬鹿なんだから、馬鹿は馬鹿らしくいつも通り鈍感で、何も気づかずへらへら笑ってろよ!!!」


「何ですって!!? それじゃあたしはただの馬鹿じゃない!!!」


「だから馬鹿だって言ってるだろ、せりは!!!」


「女の子に向かって、馬鹿馬鹿言わないでよ!!! どうして久遠はそんなに可愛くない言い方しか出来ないのよ!!」


「ああ、可愛くなくて結構!!! 今更"女の子"ぶるなよ、せり!!! それに、せりに可愛いなんて思われたら、ぞっとして鳥肌になるじゃないか!!!」


「~~ッッッ!!! 久遠、あんたね」




「煩いッッ!!!」



突如別の声に怒鳴られて。


見れば――

廊下で仁王立ちをする蓮だった。