「せりに老後の心配なんてされたくないんだよ!!! せり、やめろ、おい!!!」
ぶちぶちぶち…。
「こんな…まるであたしに毟って下さいって言ってるような毛をふさふささせている癖に。あんた各務の坊ちゃんなんだから、やめろだとかどけろだとか、せこいこと言わないの!!!」
ぶちぶちぶち…。
「せこいとかの問題じゃないだろ!!! そんなにこの毛が気になるのなら、撫でろ。とにかく優しく優しくオレの毛を撫でろ!!! 普通はそうだろ、愛情もって接したくなる…そういうもんだろ!!? 何で舌打ちする、せり!!!」
「判ったわよ、優しくすればいいんでしょ、優しく!!!」
ナデナデナデ…。
「これならいい?」
「……ん」
優しく触ればいいらしい。
"愛情もって接したくなる"
久遠はそう接して貰いたいんだろうか。
まあ…13年ぶりの再会時の拒絶態度に比べれば、かなりマシに丸くなったけれど、喧嘩をふっかけてくるのは…今も昔も久遠からなのに。
別にあたしは久遠を邪険にしているわけじゃない。
何て言っても初恋の人だ。
あたしにとって、久遠は永遠に特別な人だ。
エイエンヲササゲタノハクオン?
だからあたしは、久遠と共に"約束の地(カナン)"で生きようと…。
あれ…?
あたしは何で帰ったんだっけ?
……?
思い出せない。

