シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
あたしは更に…久遠のふさふさな背中に抱きついた。


「せり…止めろ」


静かな静かな久遠の声が聞こえてくる。


「此処に連れてきてくれたのも、ありがとうね。本当にありがとう。玲くんも無理し過ぎていたから、安静が必要だったんだ。

久遠のおかげだよ、ありがとう…。

あたし達が来たのに気づいてくれて」


「せり……」


「あの日、"約束の地(カナン)"に来れなくてごめん。

だからと言う訳じゃないけれど…久遠が心配だから来ちゃった。よかったよ、久遠が無事で…」


「せり…。

止めろと言っているだろう」


そして久遠は――

彼の背中にあるあたしの手をむんずと掴んで。



「毛を毟(むし)るのはやめろ」



冷たい――

紅紫色の瞳で言われてしまった。



「せり。舌打ちするな」



だって…

久遠、気持ちよさそうなんだもの。


あたしも欲しいんだもの、そのふさふさ。


ああ何、その金持ち毛皮。

モロ、あたしのドストライク。


そのふさふさ感、

見ているだけで溜まらない。


それはまるで、あたしに…

"触って、揺すって、毟って"

と言っているようなもので。


ふさふさ…。

あたしのふさふさ…。


久遠の動き1つでふさふさがふるふると揺れる様が、見ているだけでたまらない。