シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



気怠げだけれど――

極上に整えられた妖麗な顔。


神秘的な…紅紫色の双眸。


気づけば――

壁により掛かるようにして、

腕組をした各務久遠がこちらを見ていた。


ふさふさと…

ふさふさと…


とにかく――

ふさふさと…。


いつもの…どうでもいいというような、無造作な久遠の服装とはまるで違う、品格漂う毛皮を着ていて。


後光を放っているような、あまりに眩しすぎる格好にて、いつも以上の存在感を見せつけて立つ久遠に、あたしは目を細めて…思わず一歩足を退いた。


ふさふさ…。

ああ、あのふさふさ…。


あたしはふさふさマジックに囚われる。


これは久遠じゃない。


これは――

久遠によく似た"王様"だ。


ふさふさの久遠なんて、久遠じゃない。


「そうだよ、久遠は久遠と出かけたはずなんだから、此処に居るはずは…。じゃあ、この久遠は? 


……?

……??

……???


すみません…、

貴方はどちらの久遠様ですか?」


そう出来るだけ丁寧に…首を傾げて聞けば。

すっと静かに紅紫色の瞳が細められる。




「ふうん…。

また忘れるんだ、オレのこと」



殺気!!!