気怠げだけれど――
極上に整えられた妖麗な顔。
神秘的な…紅紫色の双眸。
気づけば――
壁により掛かるようにして、
腕組をした各務久遠がこちらを見ていた。
ふさふさと…
ふさふさと…
とにかく――
ふさふさと…。
いつもの…どうでもいいというような、無造作な久遠の服装とはまるで違う、品格漂う毛皮を着ていて。
後光を放っているような、あまりに眩しすぎる格好にて、いつも以上の存在感を見せつけて立つ久遠に、あたしは目を細めて…思わず一歩足を退いた。
ふさふさ…。
ああ、あのふさふさ…。
あたしはふさふさマジックに囚われる。
これは久遠じゃない。
これは――
久遠によく似た"王様"だ。
ふさふさの久遠なんて、久遠じゃない。
「そうだよ、久遠は久遠と出かけたはずなんだから、此処に居るはずは…。じゃあ、この久遠は?
……?
……??
……???
すみません…、
貴方はどちらの久遠様ですか?」
そう出来るだけ丁寧に…首を傾げて聞けば。
すっと静かに紅紫色の瞳が細められる。
「ふうん…。
また忘れるんだ、オレのこと」
殺気!!!

