シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「まさか…

忘れたとか言わないよな?」


それは震えた声で。


「忘れたって何を?」


全くもって何を言いたいのか判らない。


「君の"ダーリン"のことだよ!!!」


途端、あたしの顔はぼっと赤くなった。


「ダ、ダーリンだなんて…。付き合ってもないんだし…モニョモニョ…」


「は!!? あれだけはっきりと宣言したんだ、似たようなもんじゃないか!!」


「でも…ただの"お試し"なんだって…まだ……モニョモニョ…」


両手人差し指を互いにつつき合い、もじもじしてそう言うと…



「お、…"お試し"!!? 

え? し、師匠?」



由香ちゃんの裏返った声。


何だか――


「えええええええ!!!?」


"今更そんな反応"とか言われているようで。


あたしも今更だとは思うけれど。


「何だか…玲くんと離れたくないし、玲くんに助けられてる時も、胸がきゅーっとなってドキドキしてくるから、多分あたしは玲くんが好きなんじゃないかと…。まだ、確定ではないけれど…多分そうじゃないかと…」


そう、まだ…多分の段階だけれど。


それでも、これって"恋"でしょう?


「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「………?」


「………」

「……由香ちゃん?」


「………」

「……おーい?」


突然、由香ちゃんは両手で頭を抱えた。


「不味い!!!」


続けて叫ぶ。


「これは不味いことになったぞ!!! ちょっと離れた数日間で何でこんなになったんだ!!? つきっきりで"彼"が耐えてたのを見てたボクは、どうすればいいんだよ!!?」


「……?」


「いやいやいや!!! ボクは師匠の弟子だから、師匠を応援するのが筋だろう。情けは無用!!! 師匠の切ない気持ちをボクは見てきたんだから!!! 

ここは心から"師匠、逆転優勝おめでとう"……って快く言える気分じゃないぞ、こりゃ!!! 神崎がこんな状態で、師匠が逆転したって…あああああ!!! 何だよこの状況は!!!!」


由香ちゃんが訳判らないことを叫んでいる。