「誰にや…られた!!!?」
思い返せば――
妹である遠坂は、蝶のサナギを体内に入れられて操られていた。
その発生源が、付き添っていた兄からだとすれば。
その兄は、誰から…そんなものを植え込まれていた?
それは…この姿と関係があるんじゃないか?
しかし榊は答えない。
唇は縫合されていると言えども、声帯は潰されず、呼吸器を通して"生きた"声が聞こえるのは、奇跡に近い。
榊は強い男だ。
最強氷皇の腹心で、氷皇が唯一認める部下で。
こんな有様になるような男ではないんだ。
「誰だ…!!? 誰…が…!!?」
仮面をつけた榊は答えない。
氷皇の顔が浮かんだが、俺はその選択肢は捨てた。
氷皇は非情なれど、唯一自分が認める腹心の部下を、ここまで痛めつけて喜ぶ悪趣味のようには思えなくて。
仮に氷皇が手を下したというのなら。
榊のこの姿は、"必然"となる。
どうして顔をここまで痛めつけたか。
どうして黄色い外套をつけさせたのか。
ああ、今はそんなことより。
「早く…治療を…!!!」
仮面の裏の棘に、何か薬でも塗られていたら…命すら危険になるんだ。
どこまで元の顔に戻せれるのか判らないけれど…このままではまずい。
仮面をつけねば生きていけなくなる。
男は――
榊は――
『ひつよ…ぅ…な…ぃ』
頭を横に振った。
「そんなこと…!!!」
言ってられるかと声を荒げようとした俺に、
『ゆ……か…』
酷く震えた単語を向けられた。

