ああ――
僕には、芹霞にとって強みがないんだ。
僕だからという、芹霞の中での優位性がない。
絶対性がない。
それに改めて気づかせられた。
どうすれば…。
「聞いているか、おい…」
どうすれば、僕のものになるんだろう。
どうすれば、僕のものだと回りに認めさせることが出来るのだろう。
仮に芹霞が手に入ったとしても、僕は紫堂当主に認めさせられるのだろうか。
愛人ではないと、真剣な僕の想いを受け入れてくれたのだと、…認識させられるのだろうか。
――紫堂櫂を愛してる!!!
ガラン。
僕の手の中の剣が地面に落ちた。
「おい!!!?」
頬に伝うのは…何なのか。
寒い。
無性に…寒い。
「しっかりしろ!!!」
苦しいよ…。
心が苦しいよ…。
此処は"約束の地(カナン)"。
櫂や久遠が居る土地。
その現実を再認識した僕の心は、壊れそうなくらいに震えた。
冷たく、
苦しく、
ただ独占欲と切迫感だけを膨らませて。
「おい…おい!!!?」
芹霞…。
芹霞…。
お願いだから。
――玲くん、好きだよ?
僕から――
離れて行かないで。

