僕の視界の中には、櫂の姿はなく。

可能な限り走査したのだが、地上に見出すことはできない。


櫂は何処だ!!?

何処にいるんだ!!!?


僕は、最後まで櫂の姿を探し出すことは出来なかった。


芹霞を抱えながら宙で大きく半回転をして、無事に足を地に着けば…がくりと僕の身体が前に傾いた。


収まったはずの心臓が…

不穏な乱れを見せ始めている。


少し…動きすぎたか。



「玲くん…発作!!? 薬…ああ!!! あたし鞄に入れたまま…ヘリの中だ!!!」



此処からではヘリがどの位置に落ちたのか、どうなっているのかなど確認することは出来ない。


三沢さんの安否も確認出来ない。


大丈夫だろうか。


生きていてさえくれれば。


「玲くん…あたし薬取りに行ってくる!!!」


「芹霞、大丈夫だ!」


「今は大丈夫でも、これからまた本格的に発作が起きたら!!! だから玲くんあたし……うっ…」


芹霞は言い出したら聞かないから。



「ごめんね…」


僕は当て身を食らわせた。


崩れる芹霞の身体を、剣を握りながら腕に抱き。


乱れる呼吸を繰り返しながら…ふらふらと道を歩く。


メインストリートに出れば…

櫂に会えるだろうか…。


機械室に行けば…由香ちゃん、いるだろうか。


此処は何処だ?


やばいな…。

目が霞んできた。


だけど…休んでいる暇はない。


とりあえず…安全が保証出来る場所まで、芹霞を連れねば。


芹霞を守らねば…。




その時、前方でかさりと音がして。



「せりッッッ!!!」



紅紫色の瞳をした――


各務久遠が現われたんだ。