黄色い蝶が逃げるようにして惑っている。


裂くようにして…くるくると回転しながら飛んできたのは――



「剣!!!?」



僕は反射的にそれを伸した手で掴んだ。


1m程の細身の西洋剣。


これは…バスタードソード!!!?



遠い昔…

緋狭さんから稽古をつけられたことがある。


しかもこれは…。


この剣は…!!!



――父上、どうか僕を次期当主に!!!


元老院を前にした次期当主のお披露目会。


――これで、玲と戦え。


飛び込んできた櫂と…初めて相対したのはこの剣だ。


僕は…あの時の剣を忘れることが出来ない。


まるで剣など似つかわしくない、華奢過ぎる小さな腕を震わせながら…剣を引き摺るだけで精一杯の癖をして。


それでも諦めようとしなかった漆黒の瞳。

手加減したとはいえ…僕にやられて地に転がっても、闘志だけは失わず。


諦めてばかりいた僕とは、正反対の強い光を持つその小さな従弟に…僕が恐れを感じたあの時の。

腕で勝っても、気合いで負けていたあの時の。


光煌めいていたこの剣は…扱えるだけでは僕の強みにはならず。


少しばかり先に剣が使えただけの話で。


二度目の対戦時には――

僕は負けた。


見事に…完敗だった。


僕の人生が変わったあの瞬間。

…戦いを制したのは、同じこのバスタードソードだったんだ。


これがこんな場所に飛んでくるなんて。


この形状…僕が忘れるものか。


偶然?

いや、違うだろう。


剣に対する思い入れが、触れた部分から伝わってくる。


共鳴。

剣に対する固執。


ならば。

僕と同じ記憶を持つ者がいるとしか考えられなくて。

その者が創り出した剣だとしか思えなくて。



ああ、櫂…。

お前なのか…?