荒廃した紫堂の研究所を、何の為に…あの2人は復興していたのか。
あの場所は今、何を目的として機能しているのか。
どれ程の数の人間が何をしているのか。
五皇が関わることは、依然何も判らないことばかりだけれど。
ただ1つ、判ることは――。
秘密裏の施設を私に公開したという事実を思えば、
それもまた私達の未来にとっては意味があり、"必然"ということ。
――この先、状況は更に悪化する。
少なくとも――
私を助けてそれを告知したということは、"状況悪化"は五皇の意志如何に関係なく、そして強制的に訪れるその事態は恐らく…あの2人にとっては望ましくはないのだろう。
私の太股に突如現れた、赤き薔薇の刻印。
それは偶然現われた産物ではあるまい。
救済の代償に刻まれたのだ。
忌まわしき薔薇もまた、未来にとっては必定要素だとしたら。
"案内人"だという謎の言葉で自らを言い表した氷皇が、緋狭様の動き全てを容認しているということを考えてみても、未来の"危険性"をより強調されているように思えた。
私は――
何をされたのか。
未来は不透明なれど、それでも現在を切り抜けられているのなら。
私は突き進んでいくしかない。
相手は五皇。
こちらの予想を超えた次元に居る、最強の赤と青。
私は"何か"に利用されているのかもしれない。
しかし、五皇に助けられている事実は変わらない。
ああ、もし5日前に…時間が遡ることが出来るなら。
櫂様や玲様が、助け手側にいる緋狭様の姿を見れば、
どんなにか――
心強く思われたことだろう。