――玲くん…?

――ん? 僕も芹霞が好きだよ。


いまだ貰えない。

僕には…。



――紫堂櫂を愛している!!!


あの時の…

迸(ほとばし)る程の激情を。


――君は僕の最愛の"彼女"だからね。


悔しくて…"お試し"に縋って言えど、複雑そうな顔を僕に向けてくるだけで。

何か言いたげに口を動かし、そして噤んでしまう。


それが無意識の拒否感かと思えば、酷くやるせなくて。

何も話して貰いたくなくて、芹霞を僕の胸に閉じ込めた。


何も言わせないように。


怖い。

怖いよ…。


まだ、終わっていないのに。

まだ、僕は頑張ろうとしているのに。


諦めてはいないのに。


もう…君が手に入らないということが、今から決定的になるようで。


僕の自信よりも、不安が大きく膨らんでいく。


――紫堂櫂を愛している!!!



延々と続く…

僕の苦しい恋路。


今にも壊れてしまいそうな…

硝子のような僕の恋。


壊したくない。

砕け散らせたくない。


ならば…"約束の地(カナン)"に行くのをやめるか?

今からならまだ引き返せる。


だけど――



"NO"


僕の心は答えている。



僕は――

どうしても危機的状況に居る櫂に、

背を向けることは出来なかった。