全裸の女が運ぶ、七瀬紫茉が横たわる台は、魔方陣の中心に運ばれる。
それを追うように、"エディター"…上岐妙が、ゆったりと歩いてくる。
表情はここからでは窺い知ることは出来ない。
身体に纏うは…天衣のような半透明の薄い布。
天衣…否。
彼女の身体に巻き付いているのは、そんな聖なるものではなく、どこまでも邪悪なる淫靡さを湛えた…それはまるで大蛇の様。
風に揺れる動きが、蛇の蠢きのように目に映る。
確かに淫猥な瘴気に包まれているのに、彼女の歩く様は威風堂々とした…十戒を掲げた聖人モーゼのようで、彼女を取り巻く海の如き人波は…彼女の前で2つに割れて道を作り、道脇で畏まる。
七瀬紫茉が台から下ろされ、直接魔方陣の中央に据えられた。
動かない処を見れば、眠らせられているのか。
七瀬紫茉の隣に立つ上岐妙が、人外な…擬音語のようにしか耳に届かない、呪文のようなものを唱え始めれば、成り行きを見守っていた大勢の全裸な人間達が、魔方陣を取り囲むように集まってくる。
異様な…興奮に似た熱気。
それは狂気にも似た…欲情。
ぎらついた欲の矛先は、七瀬紫茉…ただそれだけに向けられている。
彼女は美しいと思う。
それがこの淫らの空気のせいか、やけに扇情的に見えるのは確か。
しかし…ただ彼女を餌とした肉欲だけに、集団が揺り動かされているのかどうかは判らない。
詠唱をじっと待つ集団は、お預けを食らっている…躾られた獣のようであり、どことなく操られている気もするのだ。
詠唱と共に、淫欲めいた熱気は膨れあがり…魔方陣が放つ瘴気と入り混ざって、どす黒いどろどろとしたモノが…煙のように立上っている気がした。
ゆらゆらと視界が揺れる。
麝香の香りが嗅覚を刺激し、視覚を惑わせていく。
意味不明な言葉の詠唱が聴覚を刺激し、更に視覚を眩ませる。
ゆらゆらゆら…。
まるで幻覚のように。

