蓮がかざした鏡は、四方八方に銀の光を放ち、蛆を広範囲に消していく。
それはまるで聖なる銀の結界。
それに俺達を包み込んだ蓮が、口早に言った。
「蝶が…少女の目を抉っています!!!
その蝶は…ニトリクスの鏡を通してしか見ることは適わず、そして司狼達の扱う武器では…斬れませぬ!!! まだ…屋敷内には入っておりませんが、時間の問題かと!!!」
俺は、蓮の腕を引いて、唇で伝えた。
"黄色い男は?"
「いや、蝶だけだ」
何故蝶が現れた?
何故黄色の外套男は現れない?
「久遠様、こちらに来る時に、孵化された巨大な蚕を目にしましたが…あれが蝶を生んでいるのでしょうか?」
久遠は俺を見たが、俺も断定的なことは言えなかった。
横須賀港でも見た。
大きくなった蚕には、確かに"何か"が育ち脈動していた。
だがそれは蝶というより…もっと大きなもののように思えたんだ。
だが…突き刺した時に飛び散る汚濁液は黄色。
蝶の色だとすれば…蝶のサナギのようなものだと思えなくも無い。
全ては想像の領域。
何も確証めいたものは持ち合わせてはいない。
「司狼達はどうしてる?」
「はい、攻撃が通用しないので、彼らは囮に…といっても蝶が狙うのは少女。寸前で助けて気絶した少女にクラウン王子の被り物を着せ、彼らは乱舞する蝶を煽る様にして…少女のいる"サイバーショット"に誘導してます。由香が内部の電圧を上げて一気に焼き殺そうと」
サイバーショットというのは、玲と遠坂が提案した、サイバー銃で現れる敵を殺して点数を競うアトラクションだ。
この空間は全て電気で動いているため、遠隔操作は可能だ。
「"絶対防御"の加護があっても…中身の少女に蝶は誘き寄せられるというのか。少女の何をもって、蝶はその餌とみなしているんだ?
しかしそんな蝶を、電圧で何とか出来るものか?」
「はい、紫堂玲が電気の力で蝶を焼き殺したからという由香の提案により。初めは…上手くいくように思いましたが、久遠様。
突如"約束の地(カナン)"の動力が落ち、現在難航しています」
動力が…落ちた?

