シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
蓮がかざした鏡は、四方八方に銀の光を放ち、蛆を広範囲に消していく。

それはまるで聖なる銀の結界。

それに俺達を包み込んだ蓮が、口早に言った。


「蝶が…少女の目を抉っています!!!

その蝶は…ニトリクスの鏡を通してしか見ることは適わず、そして司狼達の扱う武器では…斬れませぬ!!! まだ…屋敷内には入っておりませんが、時間の問題かと!!!」


俺は、蓮の腕を引いて、唇で伝えた。


"黄色い男は?"


「いや、蝶だけだ」


何故蝶が現れた?

何故黄色の外套男は現れない?


「久遠様、こちらに来る時に、孵化された巨大な蚕を目にしましたが…あれが蝶を生んでいるのでしょうか?」


久遠は俺を見たが、俺も断定的なことは言えなかった。


横須賀港でも見た。

大きくなった蚕には、確かに"何か"が育ち脈動していた。

だがそれは蝶というより…もっと大きなもののように思えたんだ。


だが…突き刺した時に飛び散る汚濁液は黄色。

蝶の色だとすれば…蝶のサナギのようなものだと思えなくも無い。


全ては想像の領域。

何も確証めいたものは持ち合わせてはいない。


「司狼達はどうしてる?」

「はい、攻撃が通用しないので、彼らは囮に…といっても蝶が狙うのは少女。寸前で助けて気絶した少女にクラウン王子の被り物を着せ、彼らは乱舞する蝶を煽る様にして…少女のいる"サイバーショット"に誘導してます。由香が内部の電圧を上げて一気に焼き殺そうと」


サイバーショットというのは、玲と遠坂が提案した、サイバー銃で現れる敵を殺して点数を競うアトラクションだ。

この空間は全て電気で動いているため、遠隔操作は可能だ。


「"絶対防御"の加護があっても…中身の少女に蝶は誘き寄せられるというのか。少女の何をもって、蝶はその餌とみなしているんだ? 

しかしそんな蝶を、電圧で何とか出来るものか?」


「はい、紫堂玲が電気の力で蝶を焼き殺したからという由香の提案により。初めは…上手くいくように思いましたが、久遠様。

突如"約束の地(カナン)"の動力が落ち、現在難航しています」


動力が…落ちた?