だとしたら――
「天使をモチーフにした、新しいアトラクションでも紹介してるのかな?」
「……そうだとしたら、久遠は"自虐趣味"だね」
玲くんは睨み付けるように、機械を見ている。
端麗な顔が強張っている。
玲くんの中では、"よからぬ"前触れのように感じているのだろうか。
少なくとも、この事態に好意的ではない。
「……ん?」
やがて、ざあざあと…電波が乱れ始め、声が届かなくなってきた。
「おや? あれ…音が消えたな。ということは映像も途切れたな? この機械が悪いのか…いや違うな。現地のカメラがおかしいな」
聞こえなくなってしまった音声。
機械の不調は…偶然?
不安だけが募っていく。
"約束の地(カナン)"で何が起っているの?
久遠達は無事なの?
久遠は強い。
強いけれど…万が一のことがある。
久遠は決して他人に頼らない。
だから――
SOSを決して発さないから。
駆け付けて、安否を確かめたい。
玲くんは翳った顔をしたまま動かない。
三沢さんが他局に切り換えたけれど…
「あれ…他局も駄目だな。音が出ない。ということは…この機械が悪いのか?
ん…此処だけは出るな」
突然飛び込んできた音声は。
『エコエコアザラク…』
『ぎょええええええ!!!』
「ひいいいいっっ!!!」
あたしは、思わずすてんと後ろに転がった。
ああ、やだわ。はしたない。
太股までずりあがったスカートはそそくさと直した。
見てないね?
というより、誰も見ようとしないよね。
あたしは、玲くんが不自然に目をそらしているのに気づかなかった。

