「……状況が似てたから?」
続けて変なことを言い出して。
「だから、何かを思い出したの?」
思い出す?
「思い出して…拒むんだ?」
「拒むって…別に…。拒んでいるのはむしろ…」
"玲くんでしょ"
その声は続かない。
あたしの身体は持ち上げられ、玲くんに抱きしめられていたから。
「まだ終わってないんだよ!!!
早く…終わらせないでくれよ!!!
その返事は――
最後の最後にしてくれ!!!」
切なげに掠れてしまっているその声。
元気がないのは、体調のせいもあるだろう。
だけどそれ以上に、心の動揺を感じ取った。
「最後の最後に――
僕はもう一度君に言うから。
その時まで、頑張らせてよ!!!」
玲くんの身体が震えているのが判った。
「今は、何も言わないでくれ」
あたしを守ろうとしてくれていた玲くんの全身が、あたしの言い出した言葉によって震えている。
あたしが…傷つけているの?
あたしからは言っちゃいけないの?
恋愛初心者には、そうした心の流れがよく判らなくて。
ただあたしが玲くんを傷つけたという現実が辛いだけで。
とにかく今は…
何も言ってはいけないと――
そう思った。
言ってと言われて、途中まで言いかけて。
それで言うなと拒まれているのなら。
"最後の最後"とやらを待つしかない。
しかし玲くん…。
今気づいたんだけれど…。
「玲くん、お着替えしたでしょう!!?
なのに何でまた裸!!!?」
あたしが着せて上げたティアラ姫のトレーナーは、投げ捨てられている。
「………。裸じゃないよ、ちゃんとタオル…」
玲くんはあたしからそっと身体を離すと、出来た隙間から…身体に巻き付けた青いタオルを見せた。
無造作すぎて、そこが余計に…。
「そういう格好を玲くんがしたら…鼻血もんだから!!!」
「不評なら、取るけど…」
「うわっ、玲くん…取らなくてもいいから。いいって…うわわっ!!!」
慌てふためいたあたしは、玲くんを押し倒してしまった。
完全馬乗り状態。
「ごめん、玲くん病み上がりなのに…」
その時。
「おーい、メシ買ってきたぞ!!!」
後のドアががらりと開き。
「「「……」」」
また閉じられた。
あの姿は…クマ男だったんじゃ無かろうか。
いや…幻だろう。
クマ男は今操縦中だ。

