「そんなことあるか!!!

言っただろう、あいつは――

嬢ちゃんの為に命を捧げてるんだぞ!!!」


「だからあたしがそれを救いに!!!」


「嬢ちゃん!!!」


クマ男は怒鳴った。



「あいつの命がけの恋が判るか!!!?」


「え?」


「あいつは嬢ちゃんの"愛"を貫く為に、犠牲を選んだ。それを"男"の"幸せ"とした。これは男の矜持を賭けた…究極の愛情表現。

戻るということは…あいつの矜持を崩し"幸せ"すら与えないということ。

もし嬢ちゃんが、あいつの愛に応えることができないのなら。

せめて最後くらい、"男"として幸せに逝かせてやれ!!!中途半端にあいつを縛り付け、あいつの矜持を愛を…穢すな!!!」


あたしは――女だ。


男の矜持を訴えられても判るはずがない。


「好きな人を迎えにいくのが、どうしていけないことなのよ!!?」


「その好きは、女としての好きか!!?」


「"好き"にどれもこれもあるわけはない!!!

あたしの"好き"を推し量らないで!!!

あたしは、1人玲くんを残せない!!!

玲くんが逝くというのなら――

あたしも一緒に逝くッッッ!!!

それがあたしの"好き"よ!!!」


「それを――」


クマ男は声を張り上げた。


「それを世間一般には、"恋愛感情"という!!!

どうして認めようとしないんだ、お前さんはッッ!!!


嬢ちゃん、あいつを幸せにできるのは――

嬢ちゃんしかないんだよ!!!


男の幸せな最期から引き戻すというのなら、

嬢ちゃんにはあいつを幸せにする義務がある!!!」



「義務!!!?

そんなのがなくたって…


あたしが!!!

玲くんを幸せにしてみせる!!!」



そう言い切った時、


――…ちゃあああん!!!


何かの泣き声が聞こえた。


一瞬。


底知れぬ、妙な罪悪感で一杯になったけれど、


――芹霞、好きだよ?


玲くんの声にかき消された。