そして聖は、俺と桜を交互に見た。
「この聖を信用するもしないも、皆はんの勝手。
しかしこれだけは言わせて貰いま。
この先――
もしも紫茉はんを助けるつもりであれば、
お二人にとって大切な"誰か"が、
確実に窮地に追い込まれますわ。
朱やんが"生け贄"の間――
動けるのはお二人と翠はんだけ。
ウチには悪夢に移転する力はあれど、
誰かを救い出せるような"攻撃力"などありまへん。
お二人が"誰か"の窮地を恐れて、此処で引くのも自由。
お二人は紫堂、紫茉はんは皇城。
元より首を突っ込む義理はありまへんし、紫堂は紫堂で抱える問題はたぁんとあるはずですしなあ?」
かなり意味ありげな眼差しを向けられた。
多分こいつは、色々知っているのだろう。
玲の結婚話は無論――
紫堂のここ数日のお家騒動を含め、櫂の生存情報すら…もしかすると。
「此処で引くというのなら。
代わりに紫堂にとって…
いやお二人にとって有益な情報を上げても構いまへん」
それは…
まるで悪魔のような誘惑。
「無論…無料でっせ。
無料情報は…これ1回ぽっきりや」
謎ばかりの今の状況を、
「かなり核心情報…や。
どないします?」
打開できるだけの何かの情報をやると言われている。
更には…
「大切な"誰か"も…
安泰でっせ?」
なんて、魅力的な申し出。
「はああああ!!?」
声を上げたのは小猿で。
そして涙目で俺達を見た。
「ワンコ~、葉山。
俺だけでは…紫茉助けるのは無理だ。
手伝ってくれよ。
なあ…。
紫茉、お前達を助けようと頑張ってたろう!!?」
不安に揺れる藍鉄の瞳。
「紫堂も大変かもしれないけど!!!
紫茉はもっと大変なんだよ!!!
何だか判らないけど、
俺…嫌な胸騒ぎがするんだよ!!!」
こいつは――
七瀬を助けたくて必死なんだ。

