「元からそのつもりだったんだろう。

――1時間だけだ」


何だか判らないけど…

朱貴はホスト復活らしい。


「おおきに。

ではお教えしましょ。


紫茉はんは…周涅はんと共に…あの建物にいま」


だけど指指した場所は真っ暗で。


「まさか…黄幡会とは言わないな!!?」


桜が聞けば。



「そこではありまへん。


あそこの馬鹿デカいビルや。


上岐物産本社」



桜が目を細めた。



「何で…そんな処に…」



「ではいきましょか、朱やん」


「……」


朱貴は苦悶の眼差しを、聖が指指した方角に向けていて。


行きたいんだろうな。

七瀬の場所は、ここから直ぐだものな。


聖が正しいことを言っていたら…の話。


七瀬兄妹が何で上岐物産に居るのかなんて、因果関係がさっぱり判らねえ。



「朱やん。ウチも悪ではありまへんで? 

同じ過去を持つ同志やさかいなあ。

朱やんには滅法甘甘ですわ」


同志…?


「朱やんの1時間が、

紫茉はんに関係あると言ったら?」


途端、朱貴がびくんと身体を震わせた。


何かに思い至ったというように。



聖は笑った。



「だから朱やんが必要なんですわ。


"生け贄"に――」



それは…ぞっとする笑いだった。