こいつの方が一枚も二枚も上手の気がする。

口で聞いても、肝心な処は煙に巻かれる。


ある種…朱貴と同じだ。


情報がある癖に、開示しようとしない。


こんな場所で聖の素性を紐解くには、時間の無駄な気がした。


答えは出ない。

堂々巡りすぎる。


今、やるべきことはそれではない。


「ひー。紫茉の情報を寄越せ」


そう、それこそまずすべきこと。


「えー!!? 朱貴、まだ『暁の狂犬』だとか『漆黒の鬼雷』やら見つけてないじゃないか。きっと聖は…」


すると、アホハットは、心底哀れんだ眼差しで小猿の頭を撫でた。


「雄黄はんが和む気持ちも判りますな~」


「雄黄って…兄上のことか!!? 

お前、兄上のことも知ってるのか!!?」


小猿…。


尊敬する兄を知っていたからって、そんなに突然警戒心解くなよ。


相手は金髪シルクハットに半纏野郎だぞ?

警戒解ける要素が何処にある?



「――…。情報屋やさかい…」



今の間は、一体何だったんだろう。


そしてにこにこと笑った。


「恩人の翠はんからはお金は頂きまへん。

ちゃんと情報を上げましょ」


それは意外にあっさりと。


本当にこいつ…一流かよ?


「ありえない…」


桜がぶつぶつ言っている処を見れば、小猿に対しては"例外"なんだろう。



「だけど…朱やん、1時間はこちらに従って貰いま。それが最終条件や」


冷たい…眼差しだった。

それを返す眼差しもまた、冷たく。