「試したって…何試してたんだよ!!?
眼鏡に適うってどんな眼鏡だよ」
あの時間を費やされたのは、全てこいつが企てた詐術だったと思えば、腹立たしくて仕方がねえ。
アホハットは、わざとらしい口笛を吹いている。
「お前…半分って言ってたよな。まずその"半分"は誰の術だよ。誰が一緒に居たんだよ!!?」
「黙秘権行使ですわ」
そう口を開いて堂々と宣言すると、また口笛を吹いた。
…"犬のおまわりさん"を。
こいつは氷皇の分身か!!?
「じゃあ後の"半分"は!!!? お前の術なんだろ!!?」
そう言ったのは小猿で。
「何でお前が陰陽道真似た力持てるんだよ!!? たかが情報屋に、あの万年筆と陣をどうして操れるんだよ!!?」
「万年筆はウチの力ではありまへん。でもまあ…コラボなら…そうとも言えないこともないような…。ん~」
「"ケチャップの陣"はお前の力なんだな!!?」
俺はびしっと人差し指を聖に突きつけた。
「朱貴が叫んでお前が出てきたんだ。言い逃れは出来ないぞ!!?」
「ケチャ…"カゴメ"、から…ですな。短絡的ですな…。まあ…これくらいは答えましょ。あれはウチの術ですわ。"移転"させる陣」
「移転?」
「朱やんも周涅はんも似た術使いま。ウチが飛ばせるのは、悪夢の中や」
「悪夢?」
「そう。人間の深層心理の一番ドロドロとした中や。そこには色んな情報も詰まっていて、おいしい処でっせ~?」
多分。
だから情報屋なんだろうと思った。
あくどい顔を見ていれば、
何だかそれがこの男の素の顔に思えてくる。
「で、何で情報屋が、朱貴や周涅と同列の術を使える?」
小猿がしつこくそう聞くと。
「黙秘権行使や」
また口笛を吹いた。
今度は――
…"アイアイ"だ。

